肝臓専門医以外の医療従事者の方へ

肝硬変

総 論

1. 成因

 わが国では肝炎ウイルスによるものが多く、約70%がHCV感染で約20%がHBV感染によるものである。さらにアルコールが5%〜10%、その他の原因としては胆汁うっ滞(原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、胆道閉鎖症)、自己免疫性肝炎、ヘモクロマトーシス、Wilson病、肝静脈・下大静脈閉塞によるBudd-Chiari症候群などがある。症例数は全国で40〜50万人前後と推計される。肝硬変単独の死者数は年間17,000人で、性別では70%が男性である。

 
肝硬変の成因

2. 診断

  • 肝硬変を診断する際には、健診などによる肝障害の指摘の有無、アルコール摂取歴、家族歴で肝疾患の有無などを聴取することが重要である。
  • 自覚症状は代償期の肝硬変ではほとんどないことが多い。非代償期へと進行すると全身倦怠感、易疲労感、食欲不振、微熱、腹部膨満、下肢のこむら返り、味覚異常、吐血、黒色便などがみられる。
  • 身体所見としては、昼夜逆転、見当識障害、行動異常、羽ばたき振戦などの肝性脳症に伴う精神神経症状や眼瞼結膜貧血、眼球結膜黄疸、皮膚の暗褐色調の変化、黄染、紫斑(出血傾向)、くも状血管腫(首や前胸部) 、肝腫大(辺縁鈍、進行すると萎縮)、肝右葉萎縮、脾腫、腹壁静脈拡張、腹部膨満、腹水貯留(波動の触知)、腸雑音の低下(麻痺性イレウス)、臍ヘルニアなどが認められる。皮下脂肪や筋肉の減少、女性化乳房、手掌紅斑、浮腫、発熱、肝性口臭、睾丸萎縮、爪の乳白色化、ばち指・チアノ−ゼ・起座位で増悪し坐位で改善する呼吸困難などの所見が見られる。
肝硬変に伴う症状

3. 血液検査所見

 肝炎ウイルスマーカー(HBs抗原 ,HBc抗体 , HCV抗体 ) 、抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体、 IgG、IgMを検査する。

 各種合成能低下(Alb , PT, ChE , T-Chol)を肝予備能の評価として検査する。
ビリルビン上昇(直接型優位、肝不全で間接型が増加)、網内系の反応(TTT , ZTT上昇, γ-グロブリン上昇)、線維化マーカーの上昇(Ⅳ型コラーゲン、ヒアルロン酸の上昇)など。

  • 画像診断法として、肝硬変として最も簡便な診断法は超音波検査である。
  • 腹部超音波:エコーで肝表面の凹凸不整、肝辺縁の鈍化、右葉萎縮、左葉腫大、肝実質エコーレベルの不均一化、肝内脈管の狭小化および不明瞭化、門脈、脾静脈の拡張、脾腫、側副血行路、腹腔内リンパ節の腫大、腹水などを検索する。
  • 造影CTスキャン:腹部超音波では肝全体をくまなく観察することが困難な場合がある。肝硬変の重要な合併症の肝細胞癌の早期診断のため、腹部超音波以外に造影CTを年1回は施行する。
  • 腹部造影MRI:ヨード造影剤アレルギーや腎機能低下例では造影MRIを行う。目的によって造影剤を選択すれば異なる疾患の診断が行える。

4. 肝硬変の形態分類

  • 形態学的には、長与、三宅、WHO分類などが用いられる。また、機能的には代償期(肝機能が保たれている時期)と非代償期(肝機能が低下し、腹水、黄疸、脳症、出血傾向などの重篤な症状が出現する時期)とに分類される。
  • B型肝硬変では幅の狭い線維性隔壁によって隔てられた、径数ミリから1cm前後(平均7mm前後)の大きな再生結節を有し、C型肝硬変では、不規則で幅の広い線維性隔壁で隔てられた、3mm程度の不正形で小さい再生結節を有する。
  • B型肝硬変ではseroconversion後に肝炎が消退し、肝細胞が活発に再生した結果、大きな再生結節を形成する一方で、C型肝硬変では活動性炎症が持続し、種々の程度の肝実質の切り崩しやリンパ濾胞形成を伴い肝細胞の再生が制限され不整形で小さい再生結節となるといわれている。よって、B型肝炎でもseroconversionを伴わず活動性炎症が持続する場合は再生結節は小さくなる。

5. 重症度分類

 臨床的には、重症度分類としてChild-Pugh scoreが汎用される(表1)。

表1 Child-Pugh score
判定基準 1 2 3
アルブミン (g/dl) 3.5超 2.8以上3.5未満 2.8未満
ビリルビン (mg/dl) 2.0未満 2.0以上3.0以下 3.0超
(原発性胆汁性肝硬変の場合) (4.0未満) (4.0以上10以下) (10超)
腹水 なし 軽度
コントロール可能
中等度以上
コントロール困難
肝性脳症(度) なし 1〜2 3〜4
プロトロンビン時間 (秒、延長) 4未満 4以上6以下 6超
(%) 70超 40以上70以下 40未満

上記5項目のscoreを合計して判定する。
Grade A : 5〜6 , grade B : 7〜9 , grade C : 10〜15

  • 肝硬変では合併症の有無が大きく予後を左右する。1970年代では、肝硬変の死因は肝不全、消化管出血、肝細胞癌が1/3ずつを占めていたが、最近では肝硬変患者の死因は約70%が肝癌で、20%が肝不全、消化管出血は10%以下である。これには内視鏡的治療技術の進歩、残存肝機能維持療法の進歩や新規薬剤の開発が大きく寄与していると考えられる。
  • C型肝硬変では年間7%、B型肝硬変では年間3%に発癌が見られる。

各 論〜肝硬変の合併症の病態と診断〜

1. 門脈圧亢進と腹水

  • 腹水の発現には種々の因子が関与する。心拍出量、循環血液量は増加するが、多くは皮膚、筋肉、諸臓器における動静脈吻合部に奪われ、有効循環血液量はむしろ減少する。また肝硬変による肝静脈枝、肝内門脈枝の圧迫の結果類洞内静水圧、門脈圧が上昇し、低アルブミン血症による血漿膠質浸透圧の低下と相まって腹水発現につながる。
肝硬変での腹水貯留の機序

(1)腹水の診断

  • 腹水貯留時には患者は腹部膨満感を訴え、腹囲、体重が増加する。多量の腹水では波動(fluctuation)を認め、少量の腹水では体位の変換により濁音と鼓音の境界が移動する体位変換現象(shifting dullness)を認める。肥満、鼓腸や巨大腹部腫瘤、卵巣嚢腫などとの鑑別が可能となる。
  • 腹部超音波検査では、100mlの腹水もecho-free spaceとして確認することができる。Morison窩やDouglas窩、脾周囲腔、右肝下部、特に右傍結腸溝などで認める。
  • 腹水をみた場合に試験穿刺を行うが、補正不能な血液凝固障害、腸閉塞、腸壁感染症では禁忌である。
  • 腹水は多くの場合淡黄色透明である。一般に、混濁が見られれば感染を疑い、血性の場合は癌性腹水や肝癌破裂、結核性腹水を考え、乳び性の場合には癌のリンパ節転移やリンパ腫を鑑別する。
  • 肝硬変による腹水では特発性細菌性腹膜炎を合併することがある。発熱、腹痛、腹部圧痛および反跳痛などの顕性症状の頻度は約半数に過ぎないので、診断には穿刺液の細菌培養と好中球数算定が必須である。
  • 腹部エコー:境界鮮明な無エコー帯として描出される。100ml程度の腹水から描出可能とされる。Morison窩やDouglas窩、脾周囲腔、右肝下部、特に右傍結腸溝などのecho free spaceに注意する。遠肝性側副血行路が肝の周囲に認められる。
  • 腹部CT:腹水の状態を立体的に捉えやすい利点がある。胃静脈-腎静脈短絡路(G-R shunt)、脾静脈-腎静脈短絡路(S-R shunt)、食道・胃静脈瘤が認められる。
  • 胃内視鏡所見:食道・胃静脈瘤や門脈圧亢進性胃症(PHG)が認められる。

(2)腹水の治療

① 安静臥床・Na、飲水の制限

 浮腫や腹水の治療原則は安静と塩分制限と利尿薬を中心とする薬物療法である。極端な塩分制限により食欲低下が問題となるだけでなく、利尿剤投与に伴う腎障害や低Na血症の率を増加させるため、塩分は1日5g前後に制限する。

② 薬物療法

 肝硬変では二次性アルドステロン症を呈することが多く、Na貯留、K喪失傾向を認めることが多い。利尿薬の第一選択はK保持性利尿薬の抗アルドステロン薬である。本邦では、スピロノラクトン(アルダクトンA)50〜150mgの投与が一般的である。効果発現には3〜4日を要する。効果不十分な時はフロセミド(ラシックス)20〜80mgを併用する。

③ アルブミン製剤投与

 低アルブミン血症が高度時(2.5 g/dl以下)では利尿剤への反応性が乏しく、血漿蛋白製剤の投与が必要である。アルブミン静注は血漿膠質浸透圧を上昇させ、有効循環血漿量を増加させる。通常、20〜25%アルブミン製剤1日100mlを3日間投与し、血清アルブミン値3.0 g/dlを目標とする。

④ 腹水穿刺排液

 大量の腹水穿刺排液は低血圧、腎不全、肝性脳症などを誘発する危険があるとされ、1回の排液量は症例ごとに慎重に決定すべきで、2 L程度の排液から漸増していくのが望ましい。

まとめ

腹水治療では、Na・飲水の制限、利尿剤投与を行う。必要に応じてアルブミン製剤投与や腹水穿刺排液を追加する。効果不良例では、専門施設にて腹水濾過濃縮再静注、腹腔−静脈短絡術、経頸静脈肝内門脈大循環短絡術を検討する。

肝硬変に伴う腹水の治療
1.安静臥床・Na(水)の制限
塩分は1日5g前後に制限,低Na血症では水分は1日1,000ml以下に制限
2.薬物療法
スピロノラクトン(アルダクトンA) 50〜150mgの投与
     ↓
フロセミド(ラシックス) 20〜80mg併用
3.アルブミン製剤投与
低アルブミン血症が高度時(2.5g/dl以下)に20〜25%アルブミン100ml/日div、3日間
4.腹水穿刺排液
大量腹水穿刺排液(〜5L)+アルブミン製剤投与(50〜100ml).(利尿剤の減量または中止)
腹部膨満や呼吸困難の改善を目的とする時は,1日1,000mlを限度に排液を行う.
5.腹水濃縮再静注法
6.腹腔鎖骨下静脈シャント術 (Le Veen shunt,Denver shunt)
7.経頸静脈肝内門脈大循環短絡術:Transjugular intrahepatic portosystemic shunt(TIPS)

2. 食道静脈瘤の内視鏡診断

食道静脈瘤内視鏡所見記載基準(日本門脈圧亢進症研究会,1991)
判定因子 記号 細分
1. 占拠部位
location
L:Ls 上部食道まで認める静脈瘤
Lm 中部食道に及ぶ静脈瘤
Li 下部食道に限局した静脈瘤
Lg 胃静脈瘤Lg-cとLg-fに細分する
Lg-c:噴門部に近接する静脈瘤
Lg-f:噴門輪よりはなれて孤在する静脈瘤
2. 形態
form
F:F0 静脈瘤として認められないもの
F1 直線的な細い静脈瘤
F2 連珠状の中等度の静脈瘤
7F3 結節状あるいは腫瘤状の太い静脈瘤
1. 基本色調
color
C:Cw 白色静脈瘤
Cb 青色静脈瘤
附記事項 血栓化静脈瘤はCw-Th,Cb-Thと附記する
2. 発赤所見
red color sign
RC 発赤所見とは,ミミズ腫れ様所見(red wale marking:RWM),cherry red spot様所見(cherry-red spot:CRS),血マメ様所見(hemato-cystic spot:HCS)の3つを指す. F0でもRC signがあれば記載する.
RC(−) 発赤所見を全く認めないもの
RC(+) 限局性に少数認めるもの
RC(++) (+)と(+++)の間
RC(+++) 全周性に多数認めるもの
附記事項 telangiectasia(TE)があれば附記する
3. 出血所見
bleeding
sign
出血中の所見 噴出性出血(spurting bleeding)
にじみ出る出血(oozing bleeding)
止血後の所見 赤色栓(red plug)
白色栓(white plug)
4. 粘膜所見
mucosal
finding
E びらん(erosion:E)
Ul 潰瘍(ulcer:Ul)
S 瘢痕(scar:S)
の3つに分類し,(+),(−)で表現する

3. 肝性脳症

概念:
肝性脳症は重篤な肝障害が原因で生ずる意識障害を中心とする精神神経症状である。
病態:
腸管内で生じるアンモニアなどの神経毒性物質が、肝不全のため解毒されなかったり、門脈大循環シャントのために直接大循環に流入し、血液脳関門を越え脳内に入ることで、肝性脳症を呈する。
  • 分岐鎖アミノ酸量と血性亜鉛濃度は正の相関を示す。肝臓の線維化の過程でマグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、銅、カルシウムなどの金属がさまざまな形で関与している。亜鉛は肝線維化に対しては抑制的に、逆に銅はリジルオキシダーゼのco-factorであることから肝線維に対して促進的に作用する可能性が考えられる。肝硬変では肝組織中の亜鉛濃度の低下と銅濃度の増加がみられ、亜鉛欠乏が肝線維化と関係する可能性が検討されている。
  • また、慢性肝不全による肝性脳症には、増悪因子が関与していることが多い。その除去のみで改善が期待できる。食道静脈瘤出血、胃潰瘍、門脈圧亢進性胃症などの消化管出血があればその治療を行う。便秘も腸管からの中毒性物質の吸収により脳症を誘発するのでラクツロースなどで1日2回程度の軟便となるようにコントロールする。
  • 分類:肝性脳症には精神神経症状が明らかである顕性脳症と、精神神経症状が明らかではなく、臨床的には肝性脳症とは認められないが、肝硬変に鋭敏で定量的な精神神経機能検査を行うことで精神神経機能の異常が指摘される潜在性肝性脳症とがある。
  • 顕性脳症は、臨床経過や脳症の発症様式などにより急性型、慢性型、および特殊型に分類される。

 診断にあたっては、重症肝疾患の既往、羽ばたき振戦や失見当識などの精神神経症状、肝性口臭とよばれる独特のアンモニア臭や高アンモニア血症、脳波異常などが参考になる。近赤外線トポグラフィーによる脳機能測定も有用である。脳症の重症度については、犬山シンポジウムの昏睡度分類が一般に用いられる。

肝性脳症の昏睡度分類
昏睡度精神症状参考事項
I 睡眠-覚醒リズムの逆転
多幸気分、時に抑うつ状態
だらしなく、気にとめない状態
Retrospectiveにしか判定できない場合が多い
II 指南力(時、場所)障害、物を取り違える(confusion)。
異常行動(例:お金をまく、化粧品をゴミ箱に捨てるなど)
時に傾眠状態(普通の呼びかけで開眼し会話ができる)
無礼な言動があったりするが、医師の指示に従う態度をみせる
興奮状態がない
尿便失禁がない
羽ばたき振戦あり
III しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い、反抗的態度を見せる。傾眠傾向(ほとんど眠っている)
外的刺激で開眼しうるが、医師の指示に従わない、または従えない(簡単な命令には応じる)
羽ばたき振戦あり(患者の協力が得られる場合)
指南力は高度に障害
IV 昏睡(完全な意識の消失)
痛み刺激に反応する
刺激に対して払いのける動作、顔をしかめるなどが見られる
V 深昏睡
痛み刺激にも全く反応しない
(第12回犬山シンポジウム,1982一部改変)
  • 潜在性肝性脳症は、顕性肝性脳症の既往のない肝硬変患者の30〜84%に合併する。実生活、特に車の運転の安全性において注目され、また、肝不全患者の肝移植のタイミングを決定するうえでもその意義は大きく、治療を必要とするため、minimal encephalopathyと呼ばれるようになってきている。
  • 現在、minimal encephalopathyに対する確立された診断方法はなく、簡便かつ信頼性の高い国際的に共通する診断方法の開発が望まれる。
肝性脳症の治療
A.経口摂取不能時
①中心静脈栄養:高カロリー輸液用基本液25〜35 kcal/kg/日に各種ビタミン,微量元素追加.
 肝不全用特殊組成アミノ酸輸液製剤:アミノレバン500ml+50%ブドウ糖40mlを2〜3時間かけて1〜2回点滴静注.
②難消化性二糖類(ラクツロース,ラクチトール)注腸
B.経口摂取がある程度確保されている場合
①低蛋白食:発症数日は0.5 g/kg/日,その後漸次1.0〜1.5 g/kg/日に増量
②便通対策(+消化管清浄化):難消化性二糖類(ラクツロース30〜90mlなど).
③消化管清浄化:腸管非吸収性抗生物質
 (カナマイシン2〜4g/day,ポリミキシンB300〜600万単位/dayなど)
④特殊アミノ酸製剤の投与:アミノレバンEN(50g)2P2×または3P3×,ヘパンED(80g)2P2×など

4. 肝不全・黄疸

概念:
肝不全とは重篤な肝疾患に伴う高度の肝機能低下により、黄疸、腹水、肝性脳症、出血傾向など多彩な臨床症状を生ずる状態をいう。
分類:
慢性肝不全の病態には門脈・大循環系の異常が大きく関与している。すなわち、本来肝で解毒されるべき種々の中毒物質が、門脈系と下大静脈系との間に生ずる短絡(門脈大循環短絡portal systemic shunt)のため直接大循環に流入することである。また、これに加えて肝細胞機能の低下により、正常の脳の機能を営むために必要な物質(肝性因子)の低下が肝不全の病因として重要と考えられている。
黄疸:
肝細胞内では、ビリルビンはリガンジンと呼ばれる細胞内結合蛋白により、小胞体に輸送され、ここでグルクロン酸抱合され、水溶性の抱合型ビリルビンとなる。抱合型ビリルビンは、再度リガンジンと結合し毛細胆管側の肝細胞膜に到達し、膜上に存在するmultidrug resistance-associated protein 2 (MPR2)によりATP依存性に毛細胆管へと能動輸送される。肝硬変では、肝細胞のビリルビン代謝の全てが障害されるが、一般に、MRP2によるビリルビンの毛細胆間腔(胆汁中)への排泄が律速段階で最も障害されやすい。その際には抱合型ビリルビンは血液中に排泄され、血中の直接ビリルビンがまず上昇する。更に肝硬変が進行すると、抱合能の障害やシャントにより間接ビリルビンも上昇してくる。肝機能の低下は、直接型ビリルビン/総ビリルビン比で反映される。

5. 肝硬変に対する一般的な治療

日常生活指導
  • ①代償期では,できるだけ日常生活を規制しないように指導する.
  • ②代償期では,仕事内容は,デスクワークを中心とし,肉体労働や夜間長時間勤務は禁止する.
  • ③代償期では,翌日に疲れを残さない程度の軽い運動は,体力維持・QOLの維持に有用である.
  • ④非代償期では,重症度に応じて,安静を指示する.
  • ⑤非代償期では,腹水,脳症などに影響を与えない程度の仕事は許可する.
  • ⑥非代償期では,サウナや,熱い風呂に長時間つかることは注意する.
  • ⑦非代償期では,ゴルフなどの運動は門脈圧を上昇させ,食道静脈瘤の破裂の危険があり注意する.
食事療法:良質な蛋白・適正カロリー摂取が基本となる.
① 蛋白・カロリー
代償期:エネルギー25〜35 kcal/kg/日,蛋白(1.0〜1.2 g/kg)の摂取を心がける.
非代償期:
食事摂取不良による低栄養:エネルギー35〜40 kcal/kg/日,蛋白1.5 g/kg/日.
肝性昏睡(Ⅰ〜Ⅱ度):エネルギー25〜35 kcal/kg/日,一時的に蛋白0.5 g/kg/日とし,漸次1.0〜1.5 g/kg/日を補充.
肝性昏睡(Ⅲ〜Ⅳ度):エネルギー25〜35 kcal/kg/日,蛋白0.5〜1.2 g/kg/日,BCAA高含有アミノ酸輸液の投与.
②食塩・水分
代償期では7g以下/日
非代償期では5g以下/日
血清Na値が130 mEq/l以下では,水分摂取量を1日1L以下に制限する.
③ アルコール
酒類は禁酒とする. 特に,食道静脈瘤・消化性潰瘍を有する患者は,禁酒を厳守.