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肝硬変

1. 肝硬変とは

B型やC型肝炎ウイルス感染、アルコール、非アルコール性脂肪性肝炎などによって肝臓に傷が生じますが、その傷を修復するときにできる「線維(コラーゲン)」というタンパク質が増加して肝臓全体に拡がった状態のことです。肉眼的には肝臓全体がごつごつして岩のように硬くなり、大きさも小さくなって きます。顕微鏡でみると肝臓の細胞が線維によって周囲を取り囲まれている様子が観察できます。そこで肝硬変になると、肝臓が硬いために起こる腹水や食道静 脈瘤と、肝臓機能が低下するために起こる肝性脳症や黄疸が問題となります。

2. 肝硬変の原因

肝硬変をきたす病気には次のようなものがあります。

ウイルス性

  • B型肝炎ウイルス
  • C型肝炎ウイルス

自己免疫性

  • 自己免疫性肝炎(AIH)
  • 原発性胆汁性肝硬変(注)(PBC)

注:平成28年より原発性胆汁性胆管炎に病名が変更となりました。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

アルコール性

代謝性

  • ヘモクロマト−シス
  • ウイルソン病

その他

3. 肝硬変の程度の分類

肝機能をあらわすChild-Pugh分類(チャイルド–ピュー分類)が用いられています(表1)。この5項目の点数がすべて1点なら合計5点、すべて3点なら合計15点になりますが、5、6点をChild-Pugh分類A、7~9点をChild-Pugh分類B、10~15点をChild-Pugh分類Cと分類します。

表1 Child-Pugh分類のためのスコア
判定基準123
アルブミン(g/dL) 3.5超 2.8以上3.5未満 2.8未満
ビリルビン(mg/dL) 2.0未満 2.0以上3.0以下 3.0超
腹水 なし 軽度 コントロール可能 中等度以上 コントロール困難
肝性脳症(度) なし 1~2 3~4

プロトロンビン時間

(秒、延長)
(%)
4未満
70超
4以上6以下
40以上70以下
6超
40未満

4. 肝硬変の症状

  • くも状血管拡張:首や前胸部、頬に赤い斑点ができる。
  • 手掌紅班:掌の両側が赤くなる。
  • 腹水:下腹部が膨満する。大量に貯まると腹部全体が膨満する。
  • 腹壁静脈拡張:へその周りの静脈が太くなる。
  • 黄疸:白目が黄色くなる。
  • 羽ばたき振戦:肝性脳症の症状のひとつで、鳥が羽ばたくように手が震える。
  • 女性化乳房:男性でも女性ホルモンがあるが、肝臓での分解が低下するため乳房が大きくなる。
  • 睾丸萎縮:男性で女性ホルモンが高くなるため睾丸が小さくなる。

5. 血液検査

  • アルブミン値:肝臓で作られるタンパク質の代表。肝硬変になると多くの場合、3.5 g/dL以下に低下する。
  • 血小板:止血の際に働く血球の代表。肝臓の線維化が進行すると徐々に血小板数が減少する。肝硬変では血小板数10万/mm3以下が目安とされている。
  • コリンエステラーゼ:肝臓で作られるタンパク質。肝硬変では低下する。
  • プロトロンビン時間:血液が固まる時間を表す。肝硬変では血液凝固因子が低下するためプロトロンビン時間が延長する。
  • アンモニア:腸内細菌で産生されるが、肝硬変では分解が低下するため血液中に増加する。
  • 総ビリルビン:黄疸を表す指数。肝硬変で機能低下がおこると上昇する。

6. 画像診断

腹部超音波

肝硬変かどうかを超音波だけで診断することは困難ですが、進行すると肝表面の凹凸が明らかになり、肝臓の内部が粗く描出されます。肝臓が硬くなると、腸管からの血液を肝臓に運ぶ門脈の圧力が高くなるため、シャントと呼ばれる異常血管の発達を認めることがあります。

腹水の有無や脾臓腫大の程度が分かります。

肝硬度測定(フィブロスキャン®)

検査を受ける人は、超音波検査のように横になり、右上肢を拳上し肋間を広げます。脇腹に当てたプローブ内の装置から発生した弱い振動波が肝臓を伝 わる速度を超音波を使って測定します。振動波は硬い物質の中では速く、軟らかい物質の中では遅く伝わることを利用して、肝臓の硬さを算出します。計測時間 は2~5分程度で、痛みはありません。外来で繰り返しの計測も可能であり、経過観察への応用も期待されています(図1)。

フィブロスキャンとプローブ

図1 フィブロスキャンとプローブ

腹部CTスキャン

肝硬変かどうかをCTスキャンだけで診断することは困難ですが、肝表面の凹凸の程度、肝臓の右葉と左葉の大きさのバランスなどを調べます。造影剤を使用すると、肝硬変で発達することの多いシャントと呼ばれる異常血管の存在がよく分かります。腹水、肝腫瘍、脾臓腫大などの有無を診断します。

腹腔鏡(図2)

肉眼的に肝臓を観察し、肝硬変かどうかを直接診断することができます。

 肝硬変の肝臓(腹腔鏡写真)

図2 肝硬変の肝臓(腹腔鏡写真)

肝生検

肝臓に細い針を刺してごく一部を採取して、顕微鏡で肝硬変かどうかを診断します。

7. 肝硬変の治療

肝硬変そのものを治療できる薬剤はほとんどありません。

  • B型肝炎ウイルスが原因の場合には、エンテカビルやテノホビルという抗ウイルス薬を内服することによって肝機能の改善が期待できます。
  • C型肝炎ウイルスが原因の場合には、肝機能が良好な肝硬変(代償性肝硬変と言います)に対して、インターフェロン単独治療、インターフェロン・リバビリン併用治療、ペグインターフェロン・リバビリン併用療法、さらに2014年以降にはChild-Pugh分類Aに限られますが、インターフェロンフリーの経口剤治療が健康保険で認められています。
  • 肝硬変では分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)が低下するため、これを薬として補充することによって肝臓でつくられるアルブミンなどのタンパク質が改善します。
  • 肝移植:腹水や黄疸が一般的な治療によって改善しない場合には、基準を満たせば肝移植を受けられるようになりました。

8. 肝硬変の合併症と治療(肝がんは除く)

8-1.  食道静脈瘤(図3)・胃静脈瘤

肝臓が硬くなり小腸や大腸から流れ込む門脈と呼ばれる血管の圧力が高くなると、食道や胃の周りに逃げ道ができます。これが静脈瘤です。静脈瘤はいったん破裂すると消化管の中に大出血を起こすため、吐血や下血がみられます。出血の程度によっては生命に危険がおよぶこともあります。

食道静脈瘤

 図3 食道静脈瘤

出血の危険の予知

内視鏡検査(胃カメラ)で食道静脈瘤に赤い斑点(Red Colorサイン)がみられた場合には近い将来に破裂する危険が大きいことを意味します。

予防的治療

食道静脈瘤を内視鏡を用いて専用の輪ゴムで結紮(けっさつ)するか、硬化剤を静脈瘤内に注入し固めることで破裂しないようにすることができます。静脈瘤は再発することが多いので、定期的な内視鏡検査を受けること、必要に応じて予防的治療を繰り返すことが重要です。

8-2.  肝性脳症

大腸内の細菌によってアンモニアなどの老廃物が作られ、門脈を通って肝臓へ運ばれます。通常は肝臓の細胞で処理されますが、肝硬変では肝機能低下 のため十分な処理能力がなくなることと、門脈からの逃げ道を通って肝臓を素通りする結果、アンモニアなどの老廃物が血液中にたまり、脳のはたらきを低下させると肝性脳症が起こります。

肝性脳症の昏睡度分類

  • I度:軽度の障害なので気がつきにくい。昼夜逆転などの症状がある。
  • II度:判断力が低下する。人や場所を間違えるなどの症状や羽ばたき振戦を認める。
  • III度:錯乱状態や混迷に陥る。羽ばたき振戦を認める。
  • IV度:意識がなくなる(痛みには反応する)。
  • V度:意識がなくなる(痛みにも全く反応しない)。

日常生活でよく気をつけることとして、

  1. 便秘にならないこと
  2. 風邪などの感染症がきっかけになるため、手洗いやうがいを励行すること
  3. タンパク質を摂り過ぎないこと

などを守ってください。

治療法

  • ラクツロースなどの二糖類の薬を内服して血中アンモニアを下げる。
  • 分岐鎖アミノ酸を含む内服治療薬、アンモニアを作る悪玉腸内細菌を死滅させる抗生物質を内服する。

8-3. 腹水

肝硬変では血液中のアルブミンが低下し、門脈の圧力が高くなるために発生します。少量の場合には下腹部が膨満する程度ですが、大量の腹水では呼吸困難を起こすこともあります(図4、5、6)。

腹水が貯留した腹部

図4 腹水が貯留した腹部

  • 腹水が少量たまっている肝硬変症例のCT像

    図5 腹水が少量たまっている(矢頭)
    肝硬変(矢印)症例のCT像

  • 腹水が大量にたまっている肝硬変症例のCT像

    図6 腹水が大量にたまっている(矢頭)
    肝硬変症例のCT像

治療法:以下の順で治療を進めます。

  1. 減塩食:1日に摂取する塩分量を7g以下に減らす。
  2. 利尿薬内服:フロセミドやスピロノラクトンなどの利尿薬を内服する。効果が不十分な場合には、水分を強力に腎臓から出させるトルバプタンを内服する。
  3. アルブミンの点滴投与

呼吸困難感や腹部膨満感が非常に強い場合以外には、針を刺して腹水を抜くことはしません。何故なら、腹水の溜まる原因を十分に治療しなければ、いったん腹水を抜いても、またすぐ溜まるからです。

8-4. 食事療法

肝硬変において食事療法はとても重要です。肝硬変の食事両方の基本となるのは、それぞれの患者さんに見合った適正なカロリーと栄養バランスのとれた食事です。それらを元に、さらに病態に応じて食事制限しなければならない項目を守るようにすることが大切です。

具体的な内容としては、代償性肝硬変と非代償性肝硬変とでは異なります。代償性肝硬変の場合は、一般的な普通食でバランスのとれた食事内容を基本にした食事療法となり、特に制限される食品などはありませんが、塩分やカロリーの摂り過ぎには極力注意する必要があります。一方、非代償性肝硬変では、腹水や浮腫、肝性脳症などといった合併症も見られてきますので、合併症の種類によって食事療法の内容での注意点も異なってきます。

担当医や管理栄養士のアドバイスを受けながら、適切な食生活を続けることが重要となります。