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非アルコール性脂肪性肝疾患

1. はじめに

一般に肝臓の病気というと、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルスによるウイルス性肝炎やお酒の飲み過ぎによるアルコール性肝障害などを考えますが、最近、それらに関係なく発症する肝臓病として、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が注目されています。それらは、進行すると肝硬変や肝がんになる恐れもあります。

2. 増えている非アルコール性脂肪肝炎

「脂肪肝」という言葉は多くの方に知られていますが、脂肪肝は原因によって分類することができます。ひとつは飲酒による脂肪肝で、アルコール性脂肪肝と呼ばれます。これに対し、お酒を飲まないのに発症する脂肪肝を非アルコール性脂肪肝(NAFL)といいます。アメリカの肝臓学会ガイドラインによると、

  1. 肝臓に脂肪がたまっている 
  2. お酒の目立った習慣がない 
  3. 脂肪肝をきたすほかの要因がない 
  4. B・C型肝炎ではない

と定められています。

生活習慣の乱れや内臓肥満、ストレス、昼夜逆転の仕事などが原因で脂肪肝となります。顕微鏡で肝臓の細胞を見ると、肝細胞のなかに油の粒がパンパンに溜まっているのを確認できます(図1)。

非アルコール性脂肪肝(NAFL)の顕微鏡写真

  • 弱拡大

    2017年度アルコール性図1 弱拡大線維を染める染色では,線維(青色)はほとんど見られません。

  • 強拡大

    2017年度アルコール性図1 強拡大肝細胞の中に油の粒がつまっています(白い丸いところ)。これが脂肪肝です。

図1  非アルコール性脂肪肝(NAFL)の顕微鏡写真

 


この段階ではまだ肝臓の細胞の多くは壊れていません。しかし、NAFLを放っておくと、だんだん肝臓の中の環境が悪くなり、肝細胞が風船のように腫れて弱ってしまい、やがてはそれら細胞は壊れてしまい、その結果、肝臓で炎症が起こり、さらに肝臓が硬くなる線維化という現象が起きることがあります。これが、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)です(図2)。そのNAFLとNASHを合せて非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼びます。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の顕微鏡写真

  • 弱拡大

    2017年度アルコール性 図2-1 弱拡大線維を染める染色では,線維(青色)が網目状に見えます.肝臓が硬くなっている所見です.

  • 強拡大

    2017年度 アルコール性図2-2 強拡大肝細胞が膨れて,中にもやもやしたものが見えます(風船化).一方,画面右下は脂肪化です.

図2  非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の顕微鏡像

 


現在、国内での正確な患者数はわかっていませんが、人間ドックを受ける人で非アルコール性脂肪肝に罹患している人が30~40%であることから、推定で1000万~2000万人の潜在患者がいると考えられています。非アルコール性脂肪肝炎に進展するのは100~200万人と考えられています(図3)。肝がんの成因としては、非アルコール性脂肪肝炎を含むB型肝炎やC型肝炎が原因でもない、いわゆる非B非Cの肝がんの頻度が全国的に確実に増え続けています。

非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪肝炎の自然経過

図3  非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪肝炎の自然経過

3. 生活習慣病と深い関係の非アルコール性脂肪性肝疾患

非アルコール性脂肪性肝疾患の原因のほとんどは、生活習慣の乱れやストレス、運動不足など、メタボリックシンドドロームの原因と同じです。メタボの肝臓における表現形とも言ってよいでしょう。肝臓が生活習慣の乱れで被害を被って、悲鳴をあげている状態です。内臓脂肪組織は余分な栄養を脂肪として蓄えるために存在しますが、人体最大の内分泌臓器とも言われ、生活習慣病を改善させようとする善玉ホルモン(アディポネクチンなど)と、肥満になった脂肪組織から余計な脂肪酸や全身に炎症を起こすと考えられている悪玉ホルモン(悪玉アディポカイン)を分泌します。この悪玉ホルモンが過剰に肝臓に流れ込むことによって、肝臓でも炎症や不純物の処理が追いつかない状態になり、それを処理するため酸化ストレスが発生、さらに炎症が強くなります。また最近では、遺伝的な素因や、腸内細菌が肝臓に影響を与えているという報告もあります。このように非アルコール性脂肪肝は肝臓の脂肪組織、遺伝的な素因、酸化ストレス、腸内細菌など、いろいろな要因が合わさって発症すると考えられています。また非アルコール性脂肪性肝疾患には性差があると考えられています。日本肝臓学会のガイドラインや最近の報告によると、男性では40歳代に有病率のピークがあり、40%以上が非アルコール性脂肪肝を罹患していますが、女性の40歳代の有病率は10%前後ですが、60歳代の有病率は30%超に増加します(図4)。閉経による女性ホルモンの減少が関係していると考えられており、同様の傾向がアジア諸国やヨーロッパで確認されています。本邦における非アルコール性脂肪肝の有病率の性差には、背景に存在する肥満やメタボリックシンドロームの性差が影響していると考えられています。特に肥満の頻度は本邦において男性が29.6%に対し女性が21.8%と少なく、さらに昨今の美容意識の変化などから若年女性における痩せの頻度は増加傾向を示しており、非アルコール性脂肪性肝疾患の性差に影響を与えていると考えられます。

人間ドック受診者での年齢別非アルコール性脂肪性肝疾患の有病率

図4  人間ドック受診者での年齢別非アルコール性脂肪性肝疾患の有病率

非アルコール性脂肪性肝疾患はアルコール性脂肪肝炎と区別することが重要です。アルコール性脂肪肝疾患の原因となるお酒の量は、1日のエタノール摂取量で男女別におおまかに決められています。1日の飲酒量の基準は、男性が30 g、女性が20 gで、ビールでいうと、男性は大瓶1本、女性は中瓶1本以内であれば、非アルコール性です(一週間で換算するとエタノール換算で男性210 g、女性140 g)。これに対し、ビールを1日大瓶2本以上飲む場合は、アルコール性とみなされます。  

4. 肝がんになる危険性も

前述の通り、非アルコール性脂肪肝から非アルコール性脂肪肝炎を発症し、進行すると肝臓の細胞が長い時間壊れ続け、次第に線維化を起こし肝臓はだんだん硬くなっていきます。さらにこれを放置すると、10年後には約1~2割が肝硬変になります。肝硬変にまで進行すると年率で数%に、肝がんが発生すると言われています。脂肪肝と言われる人は多く、成人の約3割と言われていますが、この段階で放置しないで、脂肪肝を治すことが大切です。

5. 超音波で早期発見を

肝臓は沈黙の臓器と言われている通り、他の肝臓病と同様に非アルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎もほとんど自覚症状はありません。また現在のところ通常の血液検査では非アルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎を確実に診断する検査項目はありません。肝機能検査で代表的なALT値が低くても非アルコール性脂肪肝炎の場合もあり、逆に数値が高くても病状が進行していない人もいます。健康診断で肝機能の数字が高くないからといって、非アルコール性脂肪肝炎ではないとは限りません。まず肝臓に脂肪がたまっている状態である脂肪肝を判別するいちばんの方法は、腹部超音波検査(腹部エコー検査)です。腹部エコーでは正常の肝臓と比べて肝臓に脂肪が溜まると肝臓は白く輝いて見えます。また奥が見えにくくなったり、となりの臓器である腎臓と比べて肝臓はより白く見えます(図5)。

  • 2017年度 アルコール性 図5-1 深部減衰肝臓は白くなり(輝度上昇)、奥に行くにつれて見えにくくなっています(深部減衰)。

  • 2017年度アルコール性 図5-2 肝腎コントラスト陽性肝臓は腎臓の外側の部分(腎皮質)よりも白く見えます(肝腎コントラスト陽性)。

図5 腹部超音波検査(腹部エコー)による脂肪肝の所見


腹部エコーができない場合は、自分のおへそあたりの腹囲(ウエスト周囲長)を測ってみましょう。男性ではウエストが85センチ以上、女性は95センチ以上の場合、脂肪肝を持っている人が半数以上となります。ウエストを測ってみて該当する方は、お近くの医療機関の腹部エコーで肝臓を診てもらうことをおすすめします。また20歳の時の体重から10kg以上増えているという方も要注意です。糖尿病や脂質異常、高血圧の方も非アルコール性脂肪肝炎の可能性は高くなります。

最終的に、非アルコール性脂肪肝か非アルコール性脂肪肝炎かを見分けるのは、最終的には肝生検による組織診断が必要になります。肝生検を受けるかどうかは、肝臓専門医による腹部エコーの所見や肝臓の硬さを測定する「肝硬度計(代表的な機器はフィブロスキャン)」を用いたり、年齢と肝機能のASTと血小板、ALTで計算する計算法があり、その結果で判断されますが、診て下さっている担当医から肝臓専門医に相談してもらうといいでしょう。なお、肝生検は通常1泊から2泊の入院が必要となります。

6. 非アルコール性脂肪性肝疾患と生活習慣病の関係は?

6-1. 血糖値の異常や糖尿病と非アルコール性脂肪性肝疾患

非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪肝炎は血糖値の異常や糖尿病と強い関連があります。本邦では人間ドックで空腹時の血糖が110 mg/dL以上の受診者のおよそ半数が、さらに空腹時血糖が126 mg/dL以上の受診者の68%が非アルコール性脂肪性肝疾患を有していたと報告されています。また肝生検で診断された非アルコール性脂肪性肝疾患の1,365例の調査で糖尿病の有病率は47.3%で、さらに糖尿病患者は肝線維化が進行した非アルコール性脂肪肝炎であるリスクが糖尿病でない患者と比べて2.4倍高いと報告されています。

6-2. 脂質異常症と非アルコール性脂肪性肝疾患

高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高中性脂肪血症などを総じて脂質異常症と言いますが、脂質異常症は非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪肝炎の有病率を上昇させることが知られています。非アルコール性脂肪性肝疾患における脂質異常症の合併頻度は、約50%と報告されています。人間ドッグを対象とした過去の報告では、高LDLコレステロール血症を有する受診者の38.5%が非アルコール性脂肪性肝疾患を合併し(正常者では26.4%)、低HDLコレステロール血症を有する受診者の61.7%(正常者では27.3%)、高中性脂肪血症を有する受診者の59.5%(正常者では22.8%)が非アルコール性脂肪性肝疾患を合併しています。

6-3. 高血圧と非アルコール性脂肪性肝疾患

非アルコール性脂肪性肝疾患における高血圧の合併頻度は、約30-50%です。非アルコール性脂肪性肝疾患は動脈硬化や心臓病のリスクであるとも報告されています。逆に高血圧は非アルコール性脂肪性肝疾患発症のリスクであると報告さており、高血圧と非アルコール性脂肪性肝疾患には強い関連性があると考えられていますが、そのメカニズムははっきりしていません。高血圧が非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪肝炎の発症や病態にどのように影響を及ぼしているのかは今後の研究課題となっています。

7. 非アルコール性脂肪性肝疾患の治療法は?

生活習慣病を発端とする肝臓病であるので、まずは食習慣や運動、睡眠など生活習慣の改善をすることが大切です。場合によっては、薬物療法、手術療法(肥満手術)を行うこともあります。非アルコール性脂肪肝なら、生活習慣の改善と経過観察をすることが多いですが、他の生活習慣病への気配りも重要です。非アルコール性脂肪肝炎の場合、重度の肥満には肥満手術が必要な場合もあります。食事運動療法で7%痩せれば、非アルコール性脂肪肝炎は改善するという科学的な根拠があります。7%の減量を目指して食事運動療法を継続することは大切です。また最近の報告では、10%の減量で、肝臓の線維化も改善すると報告されています(図6)。


2017年度図6 体重減少

 

図6  体重減少で肝臓の病理所見も改善する

 

薬物療法として非アルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎への治療薬は現在、我が国をはじめ世界中で開発が進められていますが、実際に効果が認められた特効薬はありません。したがって、現時点では生活習慣病、例えば糖尿病、脂質異常症、高血圧などの合併がある場合は、それら基礎疾患に対する治療薬で非アルコール性脂肪性肝疾患にも効果が期待されているものがありますので、それらを用いて治療します。基礎疾患がなければビタミンE(抗酸化剤)も期待できます。

8. 実は気軽にできる治療法とは?

多くのひとが実践できる治療法としては、食事運動療法による減量が効果的です。1日5分でも10分でもいいので、体を余計に動かすことです。筋肉は第2の肝臓と言われ、筋肉が増えると代謝がよくなります。特に糖代謝においては、全身の糖質の約7割は骨格筋で消費されると考えられおり、運動で骨格筋を増やすことは非アルコール性脂肪性肝疾患の改善につながります。運動は、軽く汗をかく程度の有酸素運動がよいと言われていますが、レジスタンス運動と言って、じっくり筋肉を鍛える運動(スクワットやもも上げなどの「筋トレ」)も効果があると言われています。腰や膝が痛いひとは、椅子に座って上半身だけの体操でも効果があります。食事は、過剰な糖質や脂肪分の摂取を控えましょう。ジュースや清涼飲料水のとりすぎやビタミンの摂取に良いと思ってついつい食べ過ぎてしまう果物も果糖の過剰摂取につながりますので注意します。一方では、緑黄色野菜はビタミンやミネラルの摂取のためにたくさん食べるようにしたいものです。また食物繊維も十分に摂るように心がけましょう。詳しくは、ご自分の生活スタイルに見合った食事や運動について、保健師や管理栄養士などと相談しながら、適度な運動やバランスの取れた食事を心がけます。例えば月1kgずつ落としながら、最終的には現在の体重を7~10%落とすことを目指して、運動などで活動量を増やし、食事の量・バランスを見直しますが、そして最も大切なことは、それらを半年から1年かけてゆっくり行い、そして継続することです。そのためにも、定期的に担当医や保健師、管理栄養士に相談しながら、目標を少しずつ達成していくようにしましょう。