患者さん・肝炎について知りたい方へ

C型肝炎

1. C型肝炎およびC型肝炎ウイルスとは

 C型肝炎とはC型肝炎ウイルス(HCV)の感染により起こる肝臓の病気です。肝臓は体に必要なタンパク質や栄養分の生成や貯蔵、不要となった老廃物や薬物の解毒など生きていく上で必要不可欠な機能をもっています。HCVに感染すると約70%の方が持続感染者となり、慢性肝炎、肝硬変、肝がんと進行する場合があります。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ予備能力が高く、自覚症状がないまま病気が進むことがあり、HCVの感染がわかれば症状がなくても検査や治療を検討する必要があります。

1)厚生統計協会(編著):国民衛生の動向 厚生の指標(臨時増刊)47(9):422, 2000より改変
2)日本肝臓学会:肝がん白書, 11年度

 現在日本では約110万〜125万人のHCV感染者がいると考えられています。しかし感染がわかっていない方やわかっていても通院されていない方も多いのが現状です。慢性肝炎、肝硬変、肝がん患者の75%がHCV感染者であり、年間3万人が肝がんにより亡くなっているため、C型肝炎についての正しい情報を多くの方に知っていただくことが大切です。

肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれ、肝炎になっても自覚症状はほとんどありません。そのため、気づかないままおよそ20〜30年で肝がんへと病気が進んでいきます。進むスピードは個人差があり、60歳をこえると肝がんになる確立が高くなります。病気が進むと治療も難しくなります。早めに検査して、感染していないか確認しましょう。
3) Hamada H, et al: Cancer 95:331-9, 2002

2. C型肝炎の感染経路(含むいわゆる「薬害肝炎」)と感染予防(含む日常生活の注意、針刺し事故)

 C型肝炎ウイルスは感染者の血液を介して感染します。しかしほぼ半数の方の感染源は不明のままです。過去の輸血や血液製剤の投与、臓器移植、適切な消毒をしない器具を使っての医療行為、民間療法、刺青、ピアスの穴あけ、麻薬、覚せい剤の回し打ち、感染者との剃刀や歯ブラシの共用などで感染の可能性があります。血液製剤が原因となった例の一部には、特定フィブリノゲン製剤あるいは特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎(いわゆる「薬害肝炎」)としてC型肝炎訴訟和解に至ったものもあります。またごくまれですが出産や性交渉の際にも感染の可能性があるといわれています。ですが、常識的な社会生活のうえで、他人の血液に直接触れることが無ければ、家庭や集団生活での感染のおそれはまずありません。握手や抱擁、食器の共用や入浴での感染はありません。HCV感染を理由に区別されるなどの不利益があってはいけません。

 C型肝炎感染予防のためのワクチンはできていません。感染予防のためには他人の血液に触れないことが大切です。現在使われている輸血用の血液や血液製剤は、高い精度の検査がおこなわれているためまず感染はおこりませんが、1992年以前の輸血、1994年以前のフィブリノゲン製剤、1988年以前の血液凝固因子製剤には、ウイルスのチェックが不十分だった可能性があります。

3. C型肝炎の症状と経過(肝硬変、肝癌を含む)

【C型肝炎の症状】

 肝臓は「沈黙の臓器」とか「忍耐の臓器」などと言われますが、C型肝炎も慢性肝炎の段階ではほとんどの場合自覚症状がありません。また、自覚症状と言っても何となく体がだるいとか、疲れやすいとか、食欲がわかないといったあいまいな症状のことが多いのです。肝硬変に進行したり、肝癌ができても症状がでない患者さんもたくさんおられますので、特に自覚症状がないから大丈夫だろうと自己判断するのは危険です。健康診断などの機会にできるだけきちんと検査をしていくことが重要で、血液検査を受けて初めてC型肝炎にかかっていることが判明したり、すでに肝硬変になってしまっていることがわかったりするケースも多々あるのです。

 慢性肝炎が肝硬変まで進行してしまいますと、手掌紅斑と言って手のひらが赤くなってきたり、黄疸が出現したり、むくみが出やすくなったり、腹水がたまって妊婦さんのようにお腹が膨らんできたり、さらに鼻血など出血しやすくなったり、出血が止まりにくくなったりする症状がみられることがあります。また、肝癌を合併しても初期はほとんど無症状のことが多く、癌が進行すると腹痛や発熱、黄疸がみられるようになります。

【C型肝炎の経過】

 C型肝炎ウイルスは血液を介して感染し、2〜14週間の潜伏期間を経て急性肝炎を起こすことがありますが、急性肝炎を起こすことは比較的稀です。多くは不顕性感染ですが、60〜80%の症例が慢性化すると言われています。慢性肝炎は約20年の経過で約30〜40%の患者さんが肝硬変に進行し、さらに肝硬変の患者さんにおいて年率約7%の頻度で肝癌が合併すると言われています。また、肝硬変は食道静脈瘤を合併することも多く、破裂すると致死的なこともあります。肝硬変や肝癌が末期状態に進行しますと肝不全状態となり、黄疸や腹水貯留、意識障害が進行していきます。

【C型肝炎経過図】

4. C型肝炎の検査(診断、治療、経過観察、肝癌早期発見などのための)

 まず、C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べる検査がHCV抗体検査です。HCV抗体陽性の場合、C型肝炎ウイルスに感染したことがあることを意味しますが、この場合現在もウイルスがいて持続感染をしている人と、以前に感染したことはあるが、治癒してウイルスのいない人が含まれます。そこで次にHCV核酸増幅検査(HCV RNA定量検査)といって、血液中にC型肝炎ウイルスの遺伝子が検出されるかどうかを調べる検査を行います。これが陽性ですと現在C型肝炎ウイルスに感染していることを意味します。さらに、C型肝炎ウイルスの種類を調べる検査であるセログループあるいはゲノタイプを測定し、これらを組み合わせてみることで治療方法の選択やその効果予測が可能になっています。

 現在の肝炎の程度をみるのがAST(GOT)値やALT(GPT)値です。高値が持続しますと肝臓の炎症が強く、肝炎が進行し易いと言えますが、低いからと言って進行していないとは必ずしも言えません。慢性肝炎から肝硬変への進行を予測することは非常に重要で、それには肝臓で合成される血清蛋白であるアルブミン値や凝固因子の活性を示すプロトロンビン活性値など肝合成能の低下や、肝炎の進行に従って減少してくることが知られている血小板数の低下、肝の線維化の進行を示すヒアルロン酸値の上昇などを合わせてみていく必要があります。さらに腹部超音波検査やCT、MRI検査などの画像検査あるいは腹腔鏡検査によって肝臓の形態的な変化を調べ、肝生検と言って肝臓の組織の一部を採取して肝臓の組織学的変化をみる検査を必要に応じて実施して判断します。また、特に肝硬変においては肝癌の早期発見に努めることが重要ですが、肝画像検査の他に補助診断として肝癌特異性の高い腫瘍マーカーであるAFP、PIVKA-Ⅱの測定が有用です。

5. C型肝炎のインターフェロン治療、経口剤治療、およびそれ以外の治療

 C型慢性肝炎に対するもっとも根本的な治療は、C型肝炎ウイルス(HCV)を体から排除することです。1992年以降、わが国ではインターフェロンという注射薬をベースにした治療が行われてきました。その後、投与期間の延長やリバビリンという飲み薬を併用することで、より高い効果が期待できるようになりました。2003年にはペグインターフェロンという週1回の注射ですむ薬剤も開発され、患者さんの負担も軽くなりました。しかし、インターフェロンやリバビリンにはいろいろな副作用があり、なかには命にかかわる副作用が出るような場合もありました。そのため、その患者さんごとにインターフェロンの効きやすさをあらかじめ予測することがきわめて重要であると考えられるようになりました。まず、ウイルス側の条件として、血中ウイルス量やウイルス型が知られています。すなわち、血中ウイルス量が多い患者さんは効きにくく、少ない患者さんは効きやすいことが明らかになっています。また、日本人に一番多く、感染者の70%を占める1型(ほとんどが1b型)はインターフェロンの効きが悪く、30%の2型は効きがよいこと、2型のなかでも20%を占める2a型の方が10%の2b型より効きがよいことがわかっています。特に、1b型でウイルス量が多い患者さんはインターフェロンが効きにくく、いわゆる「難治例」とされています。

 その後2009年には、患者さん側の条件として、われわれが両親から受け継いでいる遺伝子の配列のわずかな違い(遺伝子多型いでんしたけいといいます)がインターフェロンへの反応性に強く影響していることが米国、日本、オーストラリアからほぼ同時に報告されました。1b型でウイルス量の多い患者さんはペグインターフェロンとリバビリンの併用療法で約50%が完治しますが、この遺伝子多型がメジャータイプの患者さんでは約80%が完治するのに対して、その他のタイプ(ヘテロ、マイナー)の患者さんでは約20%と反応不良でした。この遺伝子多型をあらかじめ測定することで、約80%の確率で治療効果の予測が可能になりました。

 その後もC型肝炎治療は急速に進歩しました。これは、HCVそのものを直接こわすことができる薬剤(直接作用型抗ウイルス薬)が続々と開発されたからです。2011年以降、テラプレビル、シメプレビル(2013年)、バニプレビル(2014年)と登場し、ペグインターフェロン、リバビリンと併用する3剤療法が一般的な治療法となりました。1b型・高ウイルス量の患者さんでも完治率は73〜89%とさらに向上することになりました。 そして、いよいよ2014年9月には飲み薬だけの治療薬がわが国でも使えるようになりました。これが、1型に対する経口剤治療薬ダクラタスビルとアスナプレビルの2剤併用療法(24週間内服)です。続いて、2015年3月には2型に対するソホスブビルとリバビリンの2剤併用療法(12週間内服)、2015年8月には1型に対するソホスブビルとレジパスビルの2剤併用療法(12週間内服)が承認され、本格的なインターフェロンフリー経口剤治療の時代が到来しました。難治例の患者さんでも95%以上の完治率を期待しうることになりました。

 しかし、これらの最新の治療法を受けられるのは、慢性肝炎と初期の肝硬変の患者さんに限られており、肝機能がさらに低下した肝硬変の患者さんには投与することができません。どうしてもHCVを排除できない患者さんには、肝がんの発生を予防する目的でインターフェロンを少量長期間用いる方法、C型肝炎の進行を助長する血液中の鉄分を減らすための瀉血しゃけつ療法りょうほう(200ml程度の血液を定期的に抜く治療)があるほか、インターフェロンが使えない患者さんには、ウルソデオキシコール酸(内服)やグリチルリチン配合剤(注射)により、肝機能を正常に保ち、肝炎の進行を防止する肝庇護療法かんひごりょうほうがあります。

図5b-1、インターフェロンの効きやすさ
ウイルス遺伝子型1型効きにくい
2型効きやすい
ウイルス量高ウイルス量効きにくい
低ウイルス量効きやすい
図5b-2、 C型肝炎(ゲノタイプ1型・高ウイルス量)に対する初回治療効果の改善(主な治療方法について)

6. C型肝炎の助成制度(いわゆる「薬害肝炎」、検査助成、治療助成)

 C型肝炎の問題は、「国民が、自身のC型肝炎ウイルス感染の状況を認識し、その結果に基づき必要な診療を受けることが重要」とされています。このため、厚生労働省はさまざまな施策に取り組んでいます。その一環として、住民基本検診時の検査(一部無料)に加え、保健所や委託医療機関において肝炎ウイルス検査を無料で行なっています。また、すでに感染が診断されている肝炎の患者さんについては医療費助成事業が開始されました。特定フィブリノゲン製剤あるいは特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によりC型肝炎に感染された、いわゆる「薬害肝炎」の方には、「感染被害者救済給付金支給法」により、症状に応じて給付金が支給されます。過去にこれらが納入されていた医療機関は公表されておりますのでご参照ください。また、医療保険により肝炎ウイルスの除去を目的としておこなうインターフェロン治療やインターフェロンフリーの経口剤治療の場合には、所得に応じて、月あたりの医療費を軽減する目的で、医療費助成が受けられます。詳しくは、お近くの保健所にお問い合わせください。

・フィブリノゲン製剤納入先医療機関の追加調査について
・血液凝固因子製剤納入先医療機関の調査について
これらに関する情報は、厚生労働省ホームぺージのフィブリノゲン製剤等相談窓口から入手可能です。随時更新されています。
図6b-1、C型肝炎抗ウイルス療法に対する医療費助成