患者さん・肝炎について知りたい方へ

肝癌

① 原因

 わが国ではB型・C型肝炎ウイルス感染が原因で生じる肝細胞癌が90%を占めており、特に最近では全体の70%はC型肝炎ウイルス感染がその原因になっています。この頻度には地域差のあることが知られています。このほか、アルコール性肝障害や非アルコール性脂肪性肝炎が原因となる肝細胞癌もあります。

② 診断

腫瘍マーカー

 肝臓癌に特異的な腫瘍マーカーとしてAFP(アルファフェトプロテイン)やPIVKA‐Ⅱなどがあります。血液検査で定期的に測定することが重要です。平成20年4月から1ヶ月に1回ですが、この二つを同時に測定することが健康保険で認められました。

腹部超音波

 非常に簡便な検査法ですが、早期の肝細胞癌を発見できます(図4:黒く抜けた部分が癌です)。慢性肝炎では6ヶ月に1回、肝硬変では3ヶ月に1回は超音波検査を受けることが望ましいとされています。肝硬変で肝臓の委縮が強い人、高度の肥満者、肺気腫などで肺が過膨張している人、過去に肺切除を受けている人などでは肝臓の一部が超音波で見えにくいことがあり注意が必要です。造影剤を注射して超音波を行うと肝細胞癌か否かを診断できるようになっています。

図4

腹部造影CTスキャン

 ヨード造影剤を点滴あるいは静脈注射しながらCTスキャンを撮影すると、肝細胞癌は濃く染まります(図5:白く造影されている部分が癌です)。但し、ヨード造影剤にアレルギーのある人や腎臓機能が悪い人では造影検査は行えません。

図5

腹部MRI

 最近ではさまざまな造影剤が開発されており、検査目的に合った造影剤を選ぶことによって早期の肝細胞癌も診断できるようになりました(図6:白く造影されている部分が癌です)。但し、閉所恐怖症の人やペースメーカー埋め込みや骨折手術などで身体に金属が入っている人ではこの検査は行えません。

図6

腹部血管造影

 入院して検査します。足の付け根からカテーテルを入れて、肝動脈から造影剤を直接注入して診断します(図7:黒く造影されている部分が癌です)。肝動脈塞栓術などの治療を同時に行う場合があります。

図7

③ 治療方針の決定

 肝硬変を合併している症例が多いため、肝細胞癌の進行度と肝硬変の程度の2つを考慮して慎重に治療方針を決める必要があります。2005年に厚生労働省の班会議が作成した“科学的根拠に基づく肝癌治療ガイドライン”が提示されており、わが国ではこのガイドラインを遵守した治療が通常行われています。

④ 治療法

外科切除

肝予備能という肝機能がよい場合に行われます。

ラジオ波焼灼術をはじめとする局所療法

肝予備能がよいこと、かつ肝細胞癌の大きさが3cm以下かつ3個以内が適応となります(図8:CTスキャンで白く造影されていた癌がラジオ波焼灼術によって黒く、血液が流れない壊死になっています)。

図8

肝動脈塞栓術

肝癌が門脈に浸潤していない場合で、黄疸や腹水が治療可能な場合には施行できます(図9:肝動脈塞栓術を行った後にCTスキャンを撮影すると癌の部分はリピオドールという造影剤が溜まって白くなります)。

図9

動注化学療法

抗がん剤を注入するポートを皮下に埋め込んで持続的に抗癌剤を流します。

陽子線・重粒子線

限られた施設ですが、胃腸に接していない肝細胞癌に対して施行されています。健康保険適用がありません。

肝移植

肝細胞癌の大きさが3cmかつ3個以下あるいは5cmで1個の場合には健康保険で肝移植が受けられます。生体部分肝移植の場合には、ドナーとして親族が望ましく、血液型も一致している方が術後の成績は良好です。

⑤ 予後

 肝硬変と肝細胞癌の両者の進行度が予後に関係します。わが国では肝細胞癌の進行度と肝硬変の進行度(Child分類)の両者を足し合わせたJISスコア(表2)が広く用いらており、JISスコア毎に予後の異なることが分かっています。

JIS (JapanIntegreated Staging)スコア
変数 0 1 2 3
Child-Pugh Stage A B C  
TNM stage
表2 *日本肝癌研究会

⑥ 再発

 肝細胞癌はB型・C型肝炎ウイルス感染者に発生することが多く、癌がいったん根治できても、肝臓の他の部位に再発する率が年間20%に達します。再発を抑える治療としていくつかの試みがなされてきましたが、いまだ確立された方法はないのが現状です。