患者さん・肝炎について知りたい方へ

肝硬変

①肝硬変とは

 B型やC型肝炎ウイルス感染、アルコール、非アルコール性脂肪性肝炎などによって肝臓に傷が生じますが、その傷を修復するときにできる「線維(コラーゲン)」というタンパク質が増加して肝臓全体に拡がった状態のことです。肉眼的には肝臓全体がごつごつして岩のように硬くなり、大きさも小さくなってきます。顕微鏡でみると肝臓の細胞が線維によって周囲を取り囲まれている様子が観察できます。そこで肝硬変になると、肝臓が硬いために起こる腹水や食道静脈瘤と、肝臓機能が低下するために起こる肝性脳症や黄疸が問題となります。

②肝硬変の原因

 肝硬変をきたす病気には次のようなものがあります。

・ウイルス性
B型肝炎ウイルス
C型肝炎ウイルス
・自己免疫性
自己免疫性肝炎
原発性胆汁性肝硬変
・非アルコール性脂肪性肝炎
・アルコール性
・代謝性
ヘモクロマト−シス
ウイルソン病
・その他

③肝硬変の程度の分類

 肝機能をあらわすチャイルド分類が用いられています(表1)。

表1 チャイルドビュースコア
判定基準 1 2 3
アルブミン(g/dl) 3.5超 2.8以上3.5未満 2.8未満
ビリルビン(mg/dl) 2.0未満 2.0以上3.0以下 3.0超
腹水 なし 軽度
コントロール可能
中等度以上
コントロール困難
肝性脳症(度) なし 1〜2 3〜4
プロトロンビン時間 (秒、延長)
(%)
4未満
70超
4以上6以下
40以上70以下
6超
40未満

④肝硬変の症状

  • くも状血管拡張:首や前胸部、頬に赤い斑点ができる。
  • 手掌紅班:掌の両側が赤くなる。
  • 腹水:下腹部が膨満する。大量に貯まると腹部全体が膨満する。
  • 腹壁静脈拡張:へその周りの静脈が太くなる。
  • 黄疸:白目が黄色くなる。
  • 羽ばたき振戦:肝性脳症の症状のひとつで、鳥が羽ばたくように手が震える。
  • 女性化乳房:男性でも女性ホルモンがあるが、肝臓での分解が低下するため乳房が大きくなる。
  • 丸萎縮:男性で女性ホルモンが高くなるため睾丸が小さくなる。

⑤血液検査

  • アルブミン値:肝臓で作られるタンパク質の代表。肝硬変になると多くの場合、3.5g/dl以下に低下する。
  • 血小板:止血の際に働く血球の代表。肝硬変になると10万/mm3以下に低下することが多い。
  • コリンエステラーゼ:肝臓で作られるタンパク質。肝硬変では低下する。
  • プロトロンビン時間:血液が固まる時間を表す。肝硬変では血液凝固因子が低下するためプロトロンビン時間が延長する。
  • アンモニア:腸内細菌で産生されるが、肝硬変では分解が低下するため血液中に増加する。
  • 総ビリルビン:黄疸を表す指数。肝硬変で機能低下がおこると1.2 mg/dl以上に上昇する。

⑥画像診断

・腹部超音波:
肝硬変かどうかを超音波だけで診断することは困難。
腹水の有無や脾臓腫大の間接的診断に用いる。
進行すると表面の凹凸が明らかになる。
・腹部CTスキャン:
肝硬変かどうかを診断することは困難。
腹水や脾臓腫大の有無を診断する。
・腹腔鏡:
肉眼的に肝臓を観察し、肝硬変かどうかを直接診断できる。
・肝生検:
肝臓を一部針で採取して、顕微鏡で肝硬変かどうかを診断する。
図1

⑦肝硬変の治療

 肝硬変そのものを治療できる薬剤はほとんどありません。

  • B型肝炎ウイルスが原因の場合には、エンテカビルやラミブジンという抗ウイルス薬を内服することによって肝機能の改善が期待できます。
  • C型肝炎ウイルスが原因の場合には、ウイルス型が2型であるか、1型でもウイルス量が少ない場合にはインターフェロンβという抗ウイルス薬(注射)による治療が健康保険で認められています。
  • 肝硬変では分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)が低下するため、これを薬として補充することによって肝臓でつくられるアルブミンなどのタンパク質が改善します。
  • 肝移植:腹水や黄疸が一般的な治療によって改善しない場合には、基準を満たせば肝移植を受けられるようになりました。

⑧肝硬変の合併症と治療(肝がんは除く)

(1) 食道静脈瘤(図2)・胃静脈瘤

 肝臓が硬くなり小腸や大腸から流れ込む門脈と呼ばれる血管の圧力が高くなると、食道や胃の周りに逃げ道ができます。これが静脈瘤です。静脈瘤はいったん破裂すると消化管の中に大出血を起こすため、吐血や下血がみられます。出血の程度によっては生命に危険がおよぶこともあります。

図2

○出血の危険の予知

 内視鏡検査(胃カメラ)で食道静脈瘤に赤い斑点(Red Colorサイン)がみられた場合には近い将来に破裂する危険が大きいことを意味します。

○予防的治療

 食道静脈瘤を内視鏡を用いて輪ゴムで結紮(けっさつ)するか、硬化剤を静脈瘤内に注入 し固めることで破裂しないようにすることができます。静脈瘤は再発することが多いので、定期的な内視鏡検査を受けること、必要に応じて予防的治療を繰り返すことが重要です。

(2) 肝性脳症

 大腸内の細菌によってアンモニアなどの老廃物が作られ、門脈を通って肝臓へ運ばれます。通常は肝臓の細胞で処理されますが、肝硬変では肝機能低下のため十分な処理能力がなくなることと、門脈からの逃げ道を通って肝臓を素通りする結果、アンモニアなどの老廃物が血液中にたまり、脳のはたらきを低下させると肝性脳症が起こります。

  • 1度:軽度の障害なので気がつきにくい。昼夜逆転などの症状がある。
  • 2度:判断力が低下する。人や場所を間違えるなどの症状がある。
  • 3度:錯乱状態や混迷に陥る。
  • 4・5度:意識がなくなる。

 日常生活でよく気をつけることとして、1)便秘にならないこと、2)風邪などの感染症がきっかけになるため、手洗いやうがいを励行すること、3)タンパク質を取り過ぎないことなどが守って下さい。

 

○治療法

  • ラクツロースなどの二糖類の薬を内服して血中アンモニアを下げる。
  • 分岐鎖アミノ酸を含む内服治療薬、腸内細菌を死滅させる抗生物質を飲む。

(3) 腹水(図3)

 肝硬変では血液中のアルブミンが低下し、門脈の圧力が高くなるために発生します。少量の場合には下腹部が膨満する程度ですが、大量の腹水では呼吸困難を起こすこともあります。

図3

○治療法:以下の順で治療を進めます。

  • 1)減塩食:1日に摂取する塩分量を7g以下に減らす。
  • 2)利尿薬内服:フロセミドやスピロノラクトンなどの利尿薬を内服する。
  • 3)アルブミンの点滴投与

 呼吸困難感や腹部膨満感が非常に強い場合以外には、針を刺して腹水を抜くことはしません。何故なら、腹水の溜まる原因を十分に治療しなければ、いったん腹水を抜いても、またすぐ溜まるからです。